2013年9月29日日曜日

第7回九州・沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会の案内チラシができあがりました。

 
 
 

第7回の学習会の案内チラシができあがりました。今回の学習会は一つの家族の3つの事例案について模擬ケース会議を参加者とファシリテーターで展開します。
 子ども支援ガイドブックに示された関係機関が、その家族の状況やニーズに応じて、どのようにチームを組みどのようにサポートしていくのか、その具体例を共有することができる学習会を目指します。

第7回九州・沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会のごあんない


 

 学びは、社会参画をとおして自己実現を図る―社会の構成員(形成者)として権利を行使する―に必要な力を獲得する営みです。どの人にも保障されなければならない権利です。また、すべての人に学びが保障されることは、持続可能な社会を構築していくための必須条件です。 確かで豊かな学びを子どもに保障することは、よりよい未来を創ることです。すべての子どもに学びとそのための育ちを保障する取り組みを、おとな一人ひとりができることを寄せ合って、社会の営為として進めてまいりましょう。

九州・沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会
実行委員長 桜 井 国 俊
九州地区県同教連絡協議会
会 長 小 西 清 則

○と き:2013年12月7日(土)受付9時30分
○ところ:沖縄大学3号館101教室
○内容

【基調提起】
沖縄の子どもや親たちが抱え込まされている課題と、必要な取り組みについて、整理を試みたことを報告します。【模擬ケース会議および交流】子どもや親たちがおかれている実態のなかから、具体的な場面を例示します。その解決に向けて、子どもの育ちや学び、親のくらしにかかわるさまざまな立場から、それぞれにできることを交流しましょう。

○内容構成
テーマ:子どもの自己実現を支援するために、それぞれの役割分担と協働の取り組みを通して、私たちおとなができることを、学び、交流しましょう~ 就学支援をはじめ、子どもや家庭への支援の取り組みをとおして ~

子どもや親たちの実態から課題を整理し、共有します。その課題解決にむけて、教育・福祉分野で取り組む人たち、地域で子どもの育ちにかかわるさまざまな人たちの役割分担と協働による支援の取り組み等について交流、協議し、展望を明らかにしましょう。

■ 基調提起
 沖縄の子どもや親たちが抱え込まされている課題をどのように整理し、課題解決に必要な取り組みをどのようにつくりだしていくか(仮)

■ 模擬ケース会議および交流
 2010 年に『おきなわ子ども支援ガイドブック』(第4回学習会にて配布)が完成・発刊され、2012 年にはその改訂版(第6回学習会にて配布)も発刊されました。ガイドブックには、子どもの育ちや学び、親のくらしにかかわるさまざまな機関や支援制度の具体が盛り込まれています。それらの機関や制度を担う人たちがつながり、協働して取り組むことが求められています。 今回は、「模擬ケース会議」の形式で、目の前の子どもや親たちが困っている場面を事例として提示して、課題を整理し、それぞれの立場からできることを出し合います。子どもや親たちにかかわる人たちが一人で抱え込むのではなく、だれに、どのような相談をすればよいのか、また、ネットワークとチームワークによって、どのような支援が可能になるのかを明らかにしたいと考えます。
 模擬ケース会議における事例(意見交流の切り口)は、次の通りです。

○ 学力をはじめ学校生活に困り感をもつ子ども、「不登校」「発達障害」にかかわって
○ 母子家庭における経済的な困難や、子育てをするうえでの困難にかかわって
○ 介護をするうえでの経済的、身体的、精神的な負担にかかわって

※ 各ケース会議の間には、自由に交流できる時間を設定します。さまざまな分野・人のそれぞれにできることを知り、ネットワークとチームワークによる取り組みの可能性をひろげましょう。

■ まとめ 沖縄大学 学長 加藤彰彦さん

2013年9月28日土曜日

ロード・オブ・「おきなわ子ども支援ガイドブック2014年南部版(仮称)」①

9月16日
 沖縄県教職員組合島尻支部の委員からの要請をうけて、九州沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会実行委員会として、沖縄本島南部市町村の子どもと親への支援についてまとめたガイドブックの編集に取り組むことになりました。
 
9月27日までの取り組み
 各市町村の児童家庭課など母子福祉にかかわる部署に、協力依頼のメールを送ったとところ、さっそく糸満市の職員が協力の意向を示してくれました。

しかし、メールでの依頼についての回答が糸満市のみであったので、糸満市児童家庭課の方からのアドバイスで、南城市、八重瀬町、与那原町、南風原町、豊見城市の母子福祉担当課及び教育委員会には、文書で協力依頼をすることにしました。2013年度那覇市版を参考資料として添えて郵送します。
10月初旬には糸満市の児童家庭課担当の方に会い、編集に向けた取り組みを開始する予定です。

2013年9月21日土曜日

「40人学級における学力保障にかかわる少人数学習の研究」報告書

 江嵜さんから以前いただいた報告書。沖縄の現在の課題に重なる示唆に富んだ内容なので、その内容を共有するために、概要をこのブログにまとめてみたいと思います。

まず、この研究に至る取り組みの経緯について触れられた箇所の要約です。

「2 取り組みの経過」より

 1990年に福岡県人権・同和教育研究協議会(以下県同教)によって実施された福岡県同和教育実態調査によって、被差別部落と被差別部落外の子どもの学力格差が明らかになりました。調査結果分析から、子どもの学習理解力と生活実態、セルフイメージとの相関が明らかになり、「低学力」の克服、肯定的セルフイメージの育成、家庭・地域の教育力の向上という課題が提起されました。

 福岡県の同和教育は、「30人学級」という学級定数緩和による学力保障の取り組みを続けてきました。しかし日常的・全体的な授業改革の取り組みになり得ていないという反省のもとに、多様な学習形態の創出と内容づくりを重視する取り組みへと大きな転換が始まりました。

 同時に、子どもの学びを確かなものにするためには、学校・家庭・地域の総合力が必要であるという観点に立った取り組みを重視し1996年度から福岡県学力保障実践交流会を開催、実践の交流と検証に取り組んでいきました。

 2000年度、県同教は、低学力の背景に迫り、その要因に対する取り組みへと実践・研究の照準を変化させます。そのもととなったのが「人権教育の翼」という海外視察であり、アメリカ、テネシー州の「スタープロジェクト」の実践に触れたことが大きく影響しています。

報告書の原文を引用します。

 視察報告の内容は「就学前から小学低学年における少人数学級の体験は、その後の学習・生活に長期にわたって好影響をもたらした。その効果は厳しい生活状況にある地域において大きい」というものでした。示唆的だったのは、「クラスの人数が少なくても、授業内容づくりが伴わなければ効果は薄い」ということでした。まさに、私たちが重視してきた授業改革、学校改革の視点と重なるものでした。それは、従来の一斉画一、知識注入型の授業のあり方を克服し、学習形態を工夫して子どものニーズに応じた教育を実現する(架線は筆者による)ことでした。

 このような経緯から小学校低学年における少人数学習の取り組みを先駆的に推進するために福岡県内の4小学校(田川市立金川小学校、直方市立下境小学校、久留米市立鳥飼小学校、筑紫野市立二日市北小学校)による「40人学級における学力保障にかかわる少人数学習の研究」がスタートしました。また取り組みの効果を追跡的に測定・検証するためにそれぞれの4中学校区による実践研究活動が始まりました。

「3 実践・研究(追跡調査)から明らかになった有効な取り組み」より

(1)取り組みの特徴~今日に至る実践・研究の柱~ 


2003年度、4校の取り組みの成果を以下のように整理しています。
報告書の内容をそのまま引用します。

①田川市立金川小学校


学校の授業と、家庭での生活体験とを結ぶ取り組みが、具体的に実践に移されていった。学級の人数が少なくなったことで、一人ひとりの実態をていねいにみとることができる。その中で、セルフコントロール(自己統制力)にもつながる自己評価の取り組みを続け、成果をあげている。課題を家庭・地域が共有し、評価傾向を一致させて取り組んでいる。何をもって親とつながるのか、何を親と共有しているのか、どんなことが、どの範囲で語られなければならないのかなどの論議を大切にした。子どもの様子を家庭にていねいに伝え、褒めることや叱ることの価値を確認し、「学習応援団」を募り、授業に保護者や地域の人を招き、協働して子どもを育てている。保護者・地域と一緒に作成した『子育てハンドブックⅡ」もその取り組みを支えている。このように、学力の阻外要因を一つひとつ解消していく取り組みが継続的に行われてきている。


②直方市立下境小学校

 目の前の子どものきびしい学力実態から中心に据えるべき子どもを明らかにし、そのひとりの子にこだわり、授業づくりが取り組まれてきた。そのことによって、授業内容が、被差別部落の子どもをはじめ、きびしい子どもたちに届き、一人ひとりが自己実現できる力の基礎づくりとして生かされている。その過程で、教材・教具の工夫や「学びの場」の設定など、授業改善の視点が明らかにされ、それに基づく手法・手立ては、教師個々、学年教職員集団の個性・特性を生かしながら講じられてきた。基礎基本の定着にこだわり、家庭・保護者と協働で取り組んだ読みや漢字の指導など、保護者にも子どもの努力を伝えていった。中心に据えられた子がまわりの子たちにも認められたりする中でセルフイメージを高めていく取り組みが、継続的に行われている。
この取り組みを通して、教師自身が子どもや親、地域と出会い直し、自己変革していく姿が生み出された。一人ひとりの自己変革が教職員集団全体に広がり、学校改革のエネルギーにつながっている。


③久留米市立鳥飼小学校

 「少人数」によって生まれる「5つの余裕」(物理的・空間的・時間的・精神的・総合的余裕)を何にどう生かすかを考え、継続的に取り組まれてきた。小学校低学年の重要性をしっかりみつめ、「くぐらせ期」にこだわり、子どもたち自身が自分の中で「学び」をつないでいけるような「ひらがな指導」の工夫と、「漢字・カタカナ指導」への発展を、いろいろな手法・手立てにより計画的に行っている。「文字」との豊かな出会いを仕組みながら「学ぶ楽しさ」を追求する取り組みが、系統立てて実践された。
 そのために、一人ひとりの育ちの違いや学ぶ道筋の違いを就学前教育機関や家庭との連携によって把握した。子どもの実態からスタートし、つけたい力を明らかにしながら、個に応じた学習支援が行われた。また、年間を通じて教科学習や行事等での学び合いによって、「つながり合う学び」が生まれている。


④筑紫野市立二日市北小学校

地域における学習活動と連携し、親や地域の熱い思いや願いを根底に据えながら、さまざまな手法・手立てを導入し、授業改革・学校改革が取り組まれてきた。「子どもの実態からの授業実践」、「教育活動の基本は家庭訪問」を根底に据え、子どもの豊かな学びを保障する授業改革の一つとして、低学年重視の少人数学習が取り組まれてきた。家庭訪問の質を問い、親の思いや子どもの生活背景を受けとめ、子どもの体験・経験を親と共有し、協働の取り組みによってそれを学力にどう結びつけていくかを話し合っている。差別の悪循環を断ち切るための学力保障の考え方には、地域の人たちや保護者の,思いや教職員のかかわりが土台にあり、地域と協働して取り組むことの重要性が確認されてきている。

(2)学力実態の推移

①全体の学力の推移から


 田川市立金川小学校における「NRT学力検査」の1994年から2011年までの偏差値の推移によると、低学年を重視した少人数学習を始めた2001年以降、それまで「偏差値45の壁」を超えることがなかった学校偏差値が2010・2011年には50を超えています。

 同じく「NRT学力検査」の結果を同和地区児童と同和地区外児童とで比較すると2009年度には1.7ポイントまでその差が縮んだものの、2010年度から再び開き始め、2011年度時点では3.2ポイントとなっています。しかし、同和地区児童の数値は校区事業を始めた当初の1994年比べると3.3ポイント上昇しています。

②高校への進学状況および進級状況の比較から



直方市立直方第1中学校の2008年度から2010年度までの卒業生のうちの下境小学校卒業生の状況は高校進学率が上昇し、進路未定者数が減少しています。



  
 2001・2002年度小学校入学児童を検証学年として、1998年小学校入学生を比較対象学年として高校進学・進級の状況について分析したところ、進級率は上昇傾向を示し、同時に中退率が減少しています。
 報告では、検証学年の子どもたちの傾向として高校を中途退学しても翌年地元の高校に入り直す、留年しても退学せずに1年遅れで進級するといった「学びから逃げない」姿が特徴的であると述べています。また小学校低学年での時点で学習に対する基本姿勢を確立することがその後の修学に影響すると述べています。

(3)個の学力の推移

①特徴的な4類型
 小学校入学時から少人数学習に取り組んだ学年の児童の中で、学力的に厳しかった児童がどのような変遷をたどったを追跡し、学力の状況を4つの類型に分けそれぞれの学習の基礎となる生活実態について考察しています。

ⅰ 上昇が見られなかった子

○家庭の経済状況の厳しさが続き、衣食住の基本的生活環境が常に不安定な状況にある。
○親やきょうだいも自立できていない生活状況が続いている。
○地域の支援を受けにくい状況が続いている。

ⅱ 上昇していった子

○親が子どものことに高い関心をもつことができるようになった。
○親のがんばっている姿を見て育つことができている。
○親からいろんなことが子どもに伝えられている。
○親と教師が子どものことについてよく話し合うようになり、信頼関係が築かれている。
○良好な交友関係ができている。
○精神的に落ち着いた雰囲気で学習に向かうことができるようになった。
○将来の仕事に対する夢をもてるようになった。

ⅲ 下降していった子

○思考、判断力が問われるような学習を苦手としている。
○家族とともに過ごす時間が少ない。
○衣食住の管理がきちんとなされていない。
○おとなの否定的な言動に多く接している。
○情緒が不安定。
○親との関係が不安定。

ⅳ 上昇、下降を繰り返している子

家庭環境が急変している。

学力的に厳しい子どもの背景を探ると、親が地域の中で孤立し、地域活動にも参加していないという状況が見られたようです。また親が子にかかわる余裕がないことで食事や学習準備に関わったり、学校であったことを聞いたりすることができないことが子どもの学力に影響していると考えられるケースもあるようです。

また「自尊感情は高いが学力は厳しい」という子どもは自らを過大評価している反面つまずくとすぐにあきらめてしまう傾向があることが分かりました。

総じて、学力が厳しい子の親ほど、子どもに甘い傾向が伺えるようです。しかし親自身は子どもに厳しいと判断しているようです。子どもに考えさせたり、心に響くアドバイスをしたりした上で、我慢させ、努力し続けることの後押ししたりすることで子どもを鍛えるという厳しさが必要だと、述べています。

一方、家庭的には厳しい状況にありながら確かな学力を獲得していった子どもの背景をひもとくと、親の関わりや仲間とのつながり等の要素が支えになっているようです。そこには、親を支える地域のコミュニティーや行政、ボランティア等の支援機関のかかわり、学校教職員のていねいな取り組みが存在していました。これらが、子どもに精神的な安定を生み、生活意欲や学習意欲、将来への展望を抱かせています。



就職・生活支援パーソナル・サポートセンターについて

 おきなわ子ども支援ガイドブックに掲載した就職・生活支援パーソナル・サポートセンターの電話番号が変更になりましたので、ブログからダウンロードできる那覇市版の23ページの修正を行いました。新しい電話番号は098-865-5003です。沖縄県版も近日中に修正を行いますので、もうしばらくお待ち下さい。

2013年9月17日火曜日

第7回九州沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会の打ち合わせ

 第6回までの学習会は、基調報告の後、子どものライフステージや課題を切り口にした分科会で協議し、最後の全体会で内容を共有する、という展開で行われていました。今回の交流学習会は、全体会のみ、さらに模擬ケース会議を行う、という新しい試みを行います。
 9月16日は江嵜さんが包括支援センターや児童家庭支援センターの友人とともに練り上げてきた、鈴木家という仮想のケース事例とエコマップをもとに、模擬ケース会議の進め方について話し合いました。
  打ち合わせが始まる前までは、私を含めた他のメンバーも、子ども・母親・高齢者といった3つの別のケースをもとに模擬ケース会議を行うものと思っていましたので最初は面食らったというのが正直なところでした。

 しかし、互いに意見を交わす中で、今回提案のあったケース事例が、一つの家族に3世代の課題が内包され、それが相互に影響し合うことが子どもの課題として表面化しているということの意味、つまり「子どもの課題を家族の関係性を視野に入れて考える。」という視点を参加者が共有するという目的を確認し合うことができたと思います。
さて、ケース事例はこのようなものです。

鈴木家は、中学3年生の兄と小学4年生の妹、その母親と祖母で構成された家族です。

兄は学力的にきびしい状況ですが、高校進学を希望しています。

妹は不登校で、発達障害の疑い。

母親は、パートを掛け持ちして家計を支えています。

しかし祖母の認知症が進み・・・。

ケースの詳細は、学習会で。

 このケースを切り口に、互いにこれまでに取り組んだ事例について情報交換しながら、支援者や当事者間の交流を深めていこうというものです。また、このことは子ども支援ガイドブック活用の具体例を共有することにもつながることでしょう。

 さらに、担当している児童生徒の家庭の貧困や虐待のサインに気づきながら、どう対処したらいいのか、あるいは、どこに相談したらいいのかと途方にくれている教師のみなさんが、希望や手がかりを掴む学習会になると思います。

第7回九州沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会は

12月7日(土曜日)午前9時30分受付10時開始

沖縄大学の3号館101教室にて開催。参加費は1000円です。