2012年10月15日月曜日

沖縄の子どもたちの現状とガイドブックの作成について~九協学習会での報告より


 
 2010年に沖縄タイムスが、県内各地の教員241名を対象に実施したアンケート結果を公表しました。それによると、給食以外の食事を十分にとれない子どもがいると答えたのが44.4%、病気やけがでも病院にいけない子どもがいると答えたのが31.1%、夜、子どもだけで過ごしている子がいると答えたのが56%という、結果が報告されました。

 次は県立高校授業料の減免制度利用者の推移を示したグラフです。公立高校の授業料は2010年に無償化されましたが、授業料を免除、あるいは減額された生徒は2004年から2009年の間毎年増え続け、5年間で約1000人近く、減免率で見ると2009年には1割ちかい生徒が授業料減免制度を利用していたことが分かります。

沖縄県高教組も2010年に「子どもの貧困に関する高校生の現状~学校現場で感じること」と題したアンケート調査を行い、高校の教師383名から回答がありました。それによると、校納金を払えない生徒がいるという回答が全体の61%。アルバイト代を家計の足しにしている生徒がいるという回答は、65%。経済的理由で学校を休みがちな生徒が増えたと回答した教師がとても感じる、やや感じる、を合わせて52%、経済的理由で進学を断念する生徒が増えたと感じる教師が78%に上ることが分かります。

保護者や家族の厳しい現実は、校納金が払えないというだけでなく、通学を困難にし、学費の負担が困難なために進学を断念してしまう、など進路にも影響することが懸念されるということがこの調査から分かります。

 小中学校や高等学校の児童生徒がおかれている現状の厳しさの一端がかい間見えるデータです。このような現状は、障がいのある子どもや家族にとっても無縁ではないと思います。もともと受験料や授業料がなく、給食費や修学旅行費といった教育費の負担に対して就学奨励費などの給付があったために、経済的に困窮した状態の家族は学校からは見えにくい存在なのではないでしょうか。

 何らかの理由で、生活の基盤が不安定で、家族機能が低下している状態の保護者の困難さは、経済的に困窮していることだけでなく、社会的に孤立していることが大きく影響しています。困ったときに頼れる知人や親戚がいない、また有用な情報が届かないという孤立無援の状態、そして情報弱者であることが、困窮している家族の状態をさらに厳しくしていると言われています。

支援が必要な親や家族ほど、支援する人や組織と距離を置き、孤立している。支援が必要な家族に関わっていると、そう感じることがあります。私たちがガイドブックを作ったのも、必要な情報が本人や家族に伝わるようにしたいということでした。また、学校だけでは解決することが困難な状況を、役所や福祉に関わる専門機関を保護者に紹介したり、連携して関わっていったりするきっかけにしてほしいことも、ガイドブックの作成に向けた私たちの願いでした。

2010年に最初に作られたガイドブックは、沖縄県高教組の活動として、県立高校や特別支援学校に配布されました。翌年に、私たちは高校の教師を対象にガイドブックの活用事例についてアンケート調査を行いました。アンケートに書かれた活用の事例を紹介します。

 「卒業後の進路を進学と決めていた生徒が進学先に願書を提出後に急に就職するという.話を聞いてみると保護者である父親が失業したとのこと。「生活福祉資金」と「奨学金等」の制度があることを説明する。支援策がいくつかあると知って生徒自身が保護者と相談して進学の道を歩むことができた。生徒個々の状況によって支援できたのもガイドブックのおかげだと思いました。」

「緊急を要する事例はなし。でも生徒に学ぶ権利を保障するための支援がある事やニュースや社会情勢等から「子どもの貧困」が問題になっていることを話しました。そして自分や友達が困った時に思い出して、先生に相談するように伝えました。」

「前年度に父親が他界し、母親の給料が下がった。情報提供は行ったが、行動にまでは移せていない。」

回答数は少なかったものの、高校での活用の一端に触れることができました。

  障がいのある人たちの地域生活を支援する法律の整備や、特別支援教育コーディネータ等教師の努力により、福祉、就労、医療など専門機関と特別支援学校との連携の輪が広がりつつあります。放課後や長期休業期間中の居場所作りや、生徒や保護者が安心して卒業後の生活を迎えられるようにする準備などのために、関係機関とのネットワークと協働作業が行われています。

  これまでは、主に児童生徒に対する支援が主だったのに対し、紹介した事例にもあるように今後は、経済的な困窮や虐待といった、家族が抱えるさまざまな課題に対して、専門機関とともに取り組む場面も増えてくる可能性があります。

学校での子どもの課題の背景には、保護者がゆとりをもって子どもの養育を向かうことを阻む要因がある可能性があります。

 子どもの支援については、その家族を視野にいれて臨む必要があり、保護者の失業、精神疾患、親の介護、生徒の兄弟の不登校など様々な家族の課題に対応する機関とのネットワーク作りが課題になると思います。実際に、このような境遇の児童や生徒に出会い、相談を受けたとき、現在の苦しい状況を少しでも楽にするための一歩を踏み出すためのガイドとして、このガイドブックが活用されることを願います。

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