2015年2月14日土曜日

アールブリュットを高校生が体験する授業実践


2月8日滋賀県で行われたアールブリュット・ネットワークフォーラム2015に参加する機会があり、富山県や滋賀県の美術の教師がアールブリュットを起点にさまざまな取り組みをされている報告を聞くことができましたので、紹介します。


その前に、このフォーラムは、アールブリュットに関する各地の団体の取り組みを発信し、各団体や個人のネットワークづくりに寄与しようと企画されたものです。

フォーラムには、富山県の特別支援学校の先生、滋賀県の高等学校の先生が登壇したほか、その後の事例報告では、鳥取県保健福祉部全国障がい者芸術・文化祭課長、佐賀県文化スポーツ部文化課課長、滋賀県文化・スポーツ担当理事が登壇し、それぞれの県の取り組みを報告されていました。

 参加された方々には、ブログに取り上げ、氏名を公表することについて了解を得ていませんので、ここではそれぞれの肩書きだけを記載します。

 まず、滋賀県の先生の実践について、私が感じたことを書きます。

 その先生が勤めておられる滋賀県の県立高校は、県内有数の進学校として京都大学を含め国公立大学への現役合格生を多数輩出している学校です。
その学校の美術の先生が報告者の先生です。
 先生は、高校2年生の美術の授業の約半分をアールブリュットの作品の鑑賞の授業に位置づけています。課題解決型の授業を実践している先生のユニークなところは、アールブリュットを取り上げていることだけではありません。先生の授業はNO-MAというアールブリュットのコレクションを持っている美術館が地元にあるというメリットを生かし、先生がいわばコーディネーターとなって、アールブリュットの専門家や作家を招き、その方たちが講師として語り、生徒と対話する授業を組み立てていることです。

 生徒たちはNO-MAの学芸員からアールブリュットについて学ぶだけでなく、作品を直に見ることを体験します。また、NO-MAの美術展に際して来県した作家、宮間栄次郎さんにインタビューし、作家の生の声を聞くという体験もありました。これらの体験的な学習、探求型の学習のまとめとして、生徒たちが自ら校内の図書室でアールブリュットの展示会を企画・運営しました。

 アールブリュットの作品を授業に取り上げることについて、先生は評価が定まっていないからこそ、生徒自身がどう考えるかという授業ができる。アールブリュットを取り上げることは、作品を起点として、作者、支援者、福祉制度などいろいろな側面からアプローチすることができる、いわばいろんな引き出しがあるのだとおっしゃっていました。

 先生が、生徒のレポートを紹介する中で注目していたのが、アールブリュットを知ることが生徒の気持ちの変化に繋がったことです。ある生徒は、作家の宮間さんの考え方や生き方に触れ、「生き生きとして楽しそうだとぼんやりと思いました。」と書いていました。生徒が、アールブリュットの作品や作家を道案内にして、自分の生き方、考え方を振り返る過程を辿ることができたことに手応えを感じたそうです。

 作品を送り出す側、受け止める側が一つの輪になって結ばれ、そこから生徒の心に未来につながる種が抱かれた、そんな印象をもった実践報告でした。


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