2014年2月9日日曜日

高等学校等就学支援金と奨学のための給付金

 沖縄県の平成26年度予算案が新聞報道され、奨学のための給付金が予算化されました。この事業は、国が1/3のこりを都道府県が負担する制度ですので、今後の県の施策を注目したいです。高等学校奨学支援金は、年収約910万円未満の世帯にとっては、基本的には高校授業料無償化と変わりませんが、平成26年度に入学する全ての生徒・家庭が申請書や所得証明書を提出しなければなりませんので実施に当たっては様々な課題が現われてくるかも知れません。

 おきなわ子ども支援ガイドブックの南部版(仮称)と那覇市版の修正のための作業の過程で、上記に関する説明文を追加しました。ただし今後、県の実施の概要が公表されると修正もあります。



 

2014年2月2日日曜日

あしたが見えない~深刻化する“若年女性”の貧困~

2014年1月27日に放送されたNHKクローズアップ現代
アルバイトを掛け持ちして、家計を支えながら通信高校に通う女子高校生、将来安定した仕事に就くために、専門学校への進学を考えています。専門学校の授業料のほとんどは奨学金を充てることになりますが、専門学校卒業後の奨学金の返済が心配されます。
特に、深刻なのは若年のシングルマザーの貧困率、番組でも20代のシングルマザーの80%が貧困の状態にあると紹介しています。
さらに、このような境遇のシングルマザーを対象とした、託児所、寮付きの風俗店が存在していることを番組は紹介しています。
仕事と住まい、そして保育の提供、本来、福祉が提供すべきひとり親と子どもの最低限の生活の保障、それらが十分に提供されていない、あるは必要としている人に情報や社会のセーフティーネットが届いていない現状が、風俗店が提供している待遇との比較であぶり出されています。
テレビで紹介された事例と似たケースが、沖縄に存在し、沖縄の子どもたちが抱え込まされている課題となっていることは間違いないと思いました。

番組のHPのアドレスは、
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3458_all.html

2013年12月27日金曜日

第7回子ども支援ネットワーク交流学習会感想より

第7回子ども支援ネットワーク交流学習会に参加された皆さんから寄せられたアンケートの一部を、参加された方々の職種別に掲載します。

1 教諭

 子どもや親を支える人々がこんなにいることに驚かされた。宮崎県でも子ども支援ガイドブックみたいなものがあるかもしれない。探してつながりたい。この講座で人の周囲にはいろいろな立場で支え合える環境ができているということを実感した。厳しい状態になった時こそ周囲の「生きていこう」という声はものすごく大事だと思った。

 学習会に参加させていただきありがとうございました。笑いもあり時々「そうそう」と思うこともありあっという間の1日でした。地域のつながりを鹿児島県内でも作り上げていきたいと思います。
支援ガイドブックは大変素晴らしいものだと思います。様々な専門機関のアクセスやネットワークが実用的にまとめられていると思います。模擬ケース会議では実際に多くのいろいろな立場からの意見が聞けて良かった。模擬ケース会議では模擬ケースに絞って会議の再現でのイメージをつかみたかった。(必要に応じて解説を加えながら・・・)

 模擬ケース会議の事例で挙げられていた兄,妹と同じようなパターンの生徒と関わったことがあった。毎日ほとんど家庭訪問を行ったがほとんど改善が見られなかった。やはり母子家庭であり母親は多忙,夜勤もあり子どもだけで夜を過ごすことも・・・。母親も何とか子どもたちに関わりたかったようであったができる状態ではなく・・・。恐らく実際にこのような例は沢山あるであろう。まだ自分の近辺ではそのケアに当たることができる組織が確立していない。無力さを感じるところである。
 発達障がいの診断が出る→学校職員「あの子は病気,だから自分に責任はない,仕方がない。」という発言をよく聞く。障がいとして認識が広まったことは,それを理解しそれに応じた支援(指導)をすすめていくために必要なことであったと思うが,それよりも学校職員は自分の責任回避の理由にしている感もある。

 教員ですが,福祉のこと(どんな取り組みをしているのか)を知らなすぎだと思うし,知ろうとしない現実もあります。子どもの育ちをファミリーでとらえる,一生としてとらえるなど良い視点をいただきました。

 学校職員はどうしても学校の中だけで問題を解決しようとしがちですが,地域には様々な「その道のプロ」がいるので,「子ども」のためにつながることネットワークが大切だと改めて思いました。

2 児童養護施設職員

 それぞれの立場での事例,悩み,対応策等の意見があり参考となるネットワーク交流学習会でした。地域で問題を抱えている人に寄り添い,声を掛け合って真正面から取り組んでいくことが大事だと思います。

3 民生委員・児童委員

 多職種の交流会で本土からも参加いただき貴重な事例や意見を聞くことができ参考にさせていただいた。

4 NPO団体職員

 大変勉強になりました。知らないことだらけでびっくりしました。是非参加者が活動を拡げられるような,繋がれるような情報交換・人材バンク的なオンラインの仕組みを作って時間・場所に関わらず参画できるとHappyです。沢山の学びをありがとうございました。中・北部で学習相談会を企画しているので,おきなわ子ども支援ガイドブックも紹介します。

5 児童家庭支援センター職員

 模擬ケースの事例から進んでいく内容だったので,すごく分かりやすく,より身近に感じられ想像しやすかったです。みなさんの意見が実際のケースに結びやすく,すぐに実践につなげられる学習会でした。

 子どもの育ちを支えるために家族支援の大切さは常日頃感じるところですが,おばあちゃんのところまで焦点を当てて考えていくというのは新しい視点で考えることができました。いろんな立場の方々の声やファシリテーターさんのコメントに,意識していなかったところ,別の角度からの視点や支援を考えることができました

 各々の職場・立場で,実際に関わっている事例について話を聞くことができて良かったです。模擬ケース会議ということで1つの事例をグループで討議するようなシステムを考えていましたが,そうでなく全体が一人の人の話を聞く質疑応答でもないことが多かったのに最終的にはまとまっていました。お二人のファシリテーターの進め方もさすがですが,参加者の空気感も良かったです。

6 スクールソーシャルワーカー

 日頃意識して支援していた視点での模擬ケース会議が行われ,また沢山の関係機関の情報が得られ良かったです。次回は医療分野を含めてのケース会議を行ってほしい。

アンケートを寄せていただいた皆さんに感謝いたします。

2013年12月9日月曜日

2013年 第7回九州・沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会 基調提案


基調提起


Ⅰ はじめに

 
 平成25年度の全国学力・学習状況調査は、沖縄県の小学生の教科の一部と中学生の全教科で正答率が最下位という結果になりました。この調査からは、子どもの学力と家庭の経済的・社会的状況の格差が子どもの学力に影響することも指摘されています。後述する「40人学級における学力保障にかかわる少人数学習の研究」では、子どもの学びには、さまざまな要因が複合化、重層化して影響を及ばしていることが明らかになっています。学力の獲得が困難な子どもたちに着目し、一人ひとりの実態に即して、学校、家庭、地域、福祉等様々な立場の人たちが連携、協働して取り組むことが必要です。
  今回作成した沖縄県の子ども、親たち・家庭、社会が抱える課題の図は、子どもの学びや暮らしの現状を表すデータを抽出し相互の関連を示す試みです。第7回の学習会が、この図に示された課題を共有し、今後のネットワークづくりに資する場となることを願います。



Ⅱ 子ども、親たち・家庭、社会が抱える課題 ―沖縄の実態を切り口に―

1 社会、親たち・家庭の現状

(1)社会

①雇用状況の悪化

 沖縄県の経済状況は依然厳しい状態にあり、子どものいる世帯に深刻な影を落としています。完全失業率は6.8%で全国1位、県民所得は平成25年度の調査で全国最下位という状況です。全国3位の生活保護受給率は、高齢者の数の多さと関係していますが、近年、働ける世帯の生活保護受給率が徐々に増え、全体の生活保護受給率を押しあげているという指摘があります。

②地域コミュニティーの弱体化
 ユイマールに象徴される相互扶助の土台となる地域社会も危うい状況にあり、その一端が那覇市の自治会組織率20.9%という調査結果から浮かび上がってきます。また「今住んでいる地域の行事に参加したことがある」と答えた沖縄県の小学生の割合が21.4%(全国35.8%)という結果は、子どもたちと地域との結びつきが薄くなっていることを表し、世帯の孤立化と地域のコミュニティー機能の弱体化が進んでいることを示しています。

(2)親たち・家庭

①子育ての孤立

 15歳から19歳までの若年出産1.086%、全国1位という状況と、育児に関する相談の入り口とも言える乳幼児検診の受診率が80%前後に止まっている状況は、核家族率の高さと相まって育児に関する情報やアドバイスが届きにくいという実態をもたらし、結果的に育児の不安や不適切な養育をひき起こす要因の一つになっている可能性があります。

②就労・経済状況の悪化

 国立社会保障・人口問題研究所で貧困問題を研究しておられる阿部彩さんが2004年の国民生活基礎調査を基に推計した結果では、日本における母子世帯の貧困率は66%で、両親と子どもだけの世帯など他の家族形態に比べ突出して高くなっています。沖縄県は、この子どもの貧困のリスクが高いひとり親世帯の出現率が全国1位、母子世帯の母親の月平均の勤労収入10万円未満が39.8%です。母親に対するアンケートで、一番の悩みが生活費という結果からも、母子世帯の厳しさ、親の不安の大きさが分かります。
  また沖縄は、非正規雇用率が全国1位で、働いている人の44.5%が非正規雇用という不安定な雇用環境にあります。

2 子どもたちの現状

「1 社会、親たち・家庭の現状」で述べた「経済状況の悪化」「孤立」「地域コミュニティーの弱体化」は、貧困などにより学びが阻害されるリスクが高い世帯の子どもたちの課題に結びついています。

(1)1日の生活から

①きびしい養育環境の子どもたち

 2010年に沖縄タイムス社が沖縄県内の小中学校の教員を対象にして行ったアンケートでは、夜、子どもだけで過ごしている子どもがいると答えた教員の割合が56%、給食以外の食事を十分とれない子どもがいると答えた教員が44.4%という結果になりました。また夕食を親などと一緒に食べていると答えた小学生66.4%、中学生が50.2%という全国学力・学習状況調査における結果沖縄の結果からは、半数近い子どもたちが子どもだけで夕食を食べているという家庭の状況が明らかになってきました。   
  親や兄弟に囲まれて過す時間が保障されず、家庭が子どもの安心や安全・健康を守る場所になっていないという厳しい状況下にある子どもが少なくないことになります。

②放課後の居場所

 那覇市が市内の児童に対して行った調査では、全児童の31.2%が学校から帰っても家に誰もいない状況にあることが分かりました。このような子どもたちの居場所となる社会資源が児童クラブですが、沖縄県の学童保育料の平均は1万円超と全国平均の2倍と高額であるだけでなく、家庭の状況に合わせた減免措置を行っている市町村の割合は4%とわずかです。
  学齢期の児童生徒に対し家庭の養育を補足する児童クラブ等の社会資源を拡充するとともに、これを利用する子どもと親の生活実態に即した改善をすすめる取り組みが求められます。
  今年、少女たちを県外へ連れ出し売春をあっせんする業者が摘発されるという事件が報道されました。平成24年中における少年の補導及び保護の概況によると、青少年保護育成条例違反等の犯罪被害にあった少女の人数は235人、全国5位です。大人のモラルの問題であることは言うに及びませんが、被害にあった少女たちの多くは、家庭や学校に居場所がないなどの背景があるという指摘もあります。

③学びを支えるために

 教育委員会や学校の努力にも関わらず、沖縄県の学力テストの正答率は最下位で低迷しています。
  確かな学力を保障していくためには、学びの土台となる乳幼児期からの生活習慣や遊びなどの「体験の質と量」をより豊かで確かなものにしていく取り組みが必要です。
  平成23年度の沖縄県民健康・栄養調査によると1歳から6歳までの朝食の欠食率は16.4%で全国平均7.2%の2倍以上の数値になっています。また全国学力・学習状況調査では「自然の中で遊んだことや自然観察をしたことがありますか。」の質問に「ない」「どちらかといえばない」と答えた小学生は全国平均で18.8%、これに対し沖縄県は24.6%という結果になりました。このような現状を踏まえた幼・保、小・中・高校それぞれの、また接続・連携した授業内容の工夫や改善が必要です。
  さらに教師の側に意識改革が求められることを示す調査結果があります。全国学力・学習状況調査で学習方法(適切にノートを取るなど)に関する指導をしていると答えた小学校の教師の割合は、全国平均は56.3%に比して、沖縄は35.1%にとどまっています。さらに、児童生徒の発言や活動の時間を確保して授業していると答えた小学校の教員は、全国平均45.3%であるのに対し、沖縄は32.4%です。


(2)ライフステージから

①きびしい養育環境

 1歳から6歳までの子どもたちの約6分の1が何らかの理由で朝ご飯を食べずにいます。これは全国平均の2倍の値です。そして、夜子どもたちだけで過ごしている実態と合わせて考えると、沖縄の子どもたちの養育環境は、きわめてきびしいと言わざるを得ません。

②非行と不登校問題

 中学生の非行は深刻です。2012年の刑法犯少年に占める中学生の割合は61%で全国1位、中学生の再犯率43.6%、共犯率56.2%、ともに全国1位となっています。
  高校生の不登校は1000人あたり28.5人で全国2位の高い割合になっています。また不登校の小学生も多く、1000人あたり4.1人で全国5位の数値になっています。高校を中退する生徒は全国3位の高い割合です。さらに15歳から34歳に占めるニートの割合が全国1位という状況です。
  全国学力・学習状況調査では、「自分には良いところがない、どちらかといえばない。」と答えた小学生が24.6%、中学生で34.4%となっています。また難しいことでも失敗を恐れないで挑戦しているかという自己効力感に関する質問に対し「あてはまらない、どちらかといえばあてはまらない」と答えた小学生が26.5%、中学生が34.4%となっています。いずれも小学生に比べ中学生の割合が高くなっている傾向があります。また自己・他者肯定感に関する質問に対しては、「自分の考えや気持ちを理解してくれる友達はいない、どちらかといえばいない。」と答えた小学生が14.4%、中学生が13.7%という結果になっています。非行や中途退学の背景には、自尊感情や自己効力感、自己他者肯定感の低さがあると考えられます。これらはまた、学習や進学の意欲を低下させる要因でもあります。これらの要因が重なり合い、学びが阻害されることによって基礎教育が十分に保障されないままきびしい就労と生活を強いられていると考えられます。


3 取り組みの方向性

(1)「40人学級における学力保障にかかわる少人数学習の研究」報告書の活用

 今回、子どもや親、社会の現状を整理するにあたって、福岡県人権・同和教育研究協議会の「40人学級における学力保障にかかわる少人数学習の研究」が示した「今日的な差別(社会の歪み)によって育ちと学び、暮らしが阻害されている現実」を活用しました。
 学力保障にかかわる少人数学習の研究では、福岡県内の4つの中学校区において、子どもの学力獲得を阻害している要因を明らかにし、根本的な解決を目指す実践・研究が進められました。各校区では授業改革を進めていく中で、子どもや親のくらし、学力の土台となる生活体験、家庭の教育力に着目しています。
 研究の総括の中で、子どもや家庭をとりまく状況の厳しさが重層化し、複合化していること、そして、表面化している課題の奥には内在化している課題が隠されていることを明らかにしています。例えば「学力低下」「進路選択の幅の狭さ」「高校中途退学」といった表面化した課題には、「学習・進学意欲の低下」「自尊感情の低下」「ロールモデルの不足」といった課題が内在していると分析しています。これら10年間の実践・研究は、沖縄の教育にとって示唆に富んだ内容になっています。

(2)おきなわ子ども支援ガイドブックの取り組み

 子どもたちが抱え込まされている課題の解決のためには、子どもの育ちや学び、親の暮らしにかかわる様々な人たちのネットワークとチームワークが必要となります。平成20年度沖縄県ひとり親世帯等実態調査では、不安や悩みを「だれにも相談しない」と答えた割合が13.4%で「家族・親族」「友人・知人」に次いで第3位という結果がでています。相談相手もなく孤立し、必要な情報や支援が届かない状況にある家庭が多く存在しています。
 子ども支援ネットワーク交流学習会実行委員会では、2012年におきなわ子ども支援ガイドブックの沖縄県版、2013年に那覇市版を作成しました。子どもの育ちや学びへの支援を親支援,家族支援を視野にいれて考えるという方針にもとづいて,福祉・教育・労働等にまたがる子育てや教育,暮らしに関する支援の情報が一覧できるようにしました。作成されたガイドブックが、それぞれの立場で子どもたちに関わる人たちを応援し、ネットワークを生む触媒となることを願い、学校やNPO団体、自治体の母子支援担当課等に配布しました。

(3)九州・沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会

 以上、沖縄の実態を切り口として、表面化しているものとそこに内在するものを整理し、子どもや親たち・家庭、社会が抱えている課題の分析を試みました。さまざまな要因が重層的複合的に子どもの暮らしや学びを阻害しているという認識を踏まえ、これからの模擬ケース会議を通してネットワークとチームワークの可能性と課題克服のための取り組みを共有していきましょう。
 私たちが目指すものは、子どもが学ぶことをあきらめず、これからの社会の主体者、自立した市民として育ちゆくことができる条件、環境を整えることです。その営みは、持続可能な社会の構築を展望することでもあります。第7回九州・沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会を契機に、九州・沖縄の各地になるネットワークの構築と協働した取り組みを拡げていきましょう。

2013年11月26日火曜日

病気のために長期にわたって欠席するリスクのある子どもたちの教育

 
 沖縄県の特別支援学校編成整備計画の中で、県立森川特別支援学校の休校が位置づけられている。慢性疾患や精神疾患等により長期に入院を余儀なくされた子どもたちの教育を保障するのが、病弱・虚弱の子どもたちを対象とする森川特別支援学校である。編成整備計画では、鏡が丘特別支援学校に病弱教育の機能を集約させるとされている。しかし、病気により長期にわたって自宅療養をしている児童や通学が安定しない子どもたちの実態についてはよく分かっていない。他県の病弱教育の現状を踏まえ、沖縄県における病弱教育のあり方について考えてみたい。

1 他県における病弱教育の動向

(1)病弱・身体虚弱特別支援学級の増加

 「小中学校に在籍する『病気による長期欠席者』への特別支援教育のあり方に関する研究」(平成22年独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)では小学校の学校内特別支援学級(病弱・身体虚弱特別支援学級)数は,平成 14 年に 214 学級であったが,平成 21 年には 642 学級となり,3倍に増加した。また中学校の学校内特別支援学級数(同上)は,平成 14 年以降増加しており,平成 14 年に 87 学級であったが,平成 21年には 245 学級となり,2.8 倍に増加した。特に平成 18 年に 131 学級であったが平成 21 年には245 学級と急増していることが報告されている。


 また、平成24年度学校基本調査の結果によると,病弱・身体虚弱特別支援学級は全国に1,325学級あり,平成6年頃に比べると約2.5倍に増えている。また,全国病弱虚弱教育研究連盟が実施した平成24年度施設調査によると,病院内にある特別支援学級は248学級であった。これらのことから,おおむね病弱・身体虚弱特別支援学級の内,病院内に設置された学級は20%未満であり,80%以上が小中学校内に設置された学級であるといえる。


(2)心身症や精神疾患等の児童生徒の増加

 全国の特別支援学校(病弱)110 校に実施したアンケート調査の結果,対象児童生徒の中で心身症・精神疾患等の人数は,小学部 1,272 名中 179 名(14.1%),中学部 1,194 人中 463 名(38.8%),高等部 1,440 人中 534 名(37.1%)で,全体で 30.1%であった。平成 15 年度病弱教育研究部国内調査「病弱養護学校における心身症等の児童生徒の教育―『心身症等など行動障害』に括られる児童生徒の実態調査と教育・心理的対応―」では心身症等の児童生徒は,全体の 16.5%であったので,この5年間に,心身症・精神疾患等の児童生徒が大幅に増えたことになる。


2 県内の病弱教育の動向


(1)病気による長期欠席者の教育

 「小中学校に在籍する『病気による長期欠席者』への特別支援教育のあり方に関する研究」(平成22年独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)によれば、「小中学校に在籍し病気を理由に長期欠席(年間 30 日以上欠席)しながら特別支援教育を受けていない子どもたちが約 46,500 人(2007 年度)おり,一向に減少する気配はない。」とあり、病気による長期欠席者が特別支援教育の対象である、と明言している。


(2)病気による長期欠席者の現状

 病気を理由に長期欠席(年間30日以上)している児童の現状

学校基本調査によると、平成24年度間に沖縄県の小学校において病気を理由とした長期欠席の児童数は405名であった。平成20年度間は395名で、平成21~25年度間に在学者数は2146名減少しているのにも関わらず病気を理由とした長期欠席の児童数は10名増加している。また、中学校においても平成24年度間で277名であった。平成20年度間は162名で平成21~25年度間に在学者数は798名減少したのにも関わらず、病気を理由とした長期欠席者は115名増加している。

(http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/school/2013/sokuhou/gaiyou/02junior.pdf)

(http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/school/2013/sokuhou/gaiyou/02junior.pdf)


(3)病弱特別支援学級の設置状況

 県内の小中学校における病弱・身体虚弱特別支援学級の設置はない。また他県では市町村教育委員会が長期入院中の児童生徒への訪問教育を実施している例があるが、本県では森川特別支援学校が8つの病院内訪問学級で行う教育のみである。


(4)病弱・身体虚弱教育の顕在的ニーズと潜在的ニーズ

 現在、県立森川特別支援学校病院内訪問学級の在籍は年間を通して30名前後で推移しており、年間数十件の転入学がある。近年は義務教育段階の児童生徒のみならず、高校生を対象にした病院内訪問学級での教育を2病院において実施しており病院において教育を受けることで単位を履修し、高等学校へ復帰していった。

 このように数値として表れている実績とは別に、小中学校に在籍している子どもたちの中で、病気等により長期欠席している児童生徒の中に、本来病弱・身体虚弱教育の対象となるべき児童が埋もれてはいないか。県外においては病弱・身体虚弱特別支援学級対象の児童生徒が年々増加しているのにもかかわらず本県だけが特異的に対象児童が存在しないということは考えにくい。現在、正確な実態が把握されていない現状に光を当て、本県の病弱・身体虚弱教育の今後を見定めることが必要である。


3 今後の取り組みの方向性
 かつて特殊教育が義務化される以前、創設準備から開校にいたる過渡期にあった沖縄県立美咲養護学校の教諭たちが行ったのは、障害児を探すことであった。就学猶予という名目で教育を受ける権利を失い、家庭でひっそりと生きてきた障害児を、戸籍を頼りに見つけ出し、親を説得し学校に連れて行くことが仕事だったという。つまり創生期の特別支援学校はニーズから生まれたのではなく、ニーズを作り出す過程で成立したと言える。

 沖縄では病気により長期に欠席するリスクの高い子どもたちが、特別支援教育の対象であるという認識が広く共有されることがなかった。病気の治療が最優先されるべき、という認識に対し病院内訪問学級における教育が子どもの治療効果の向上につながっているという指摘がある。また治療中の子どもの心の居場所として、病院内訪問学級に集まる子どもたちのコミュニティーが必要だと話してくれた医師がいた。障害でもなく、さりとて普通教育からも十分に手が差し伸べられていない子どもたちについては

 今後、学習の空白をなくす取り組みを早急に進めなければならない。今できることは、実態の把握のための調査と、ニーズを生み出すための取り組みである。



 

第7回九州・沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会に向けて

 平成25年度の全国学力・学習状況調査において、沖縄は引き続き小学生の教科の一部、そして中学生の全ての教科の平均正答率が最下位という結果になった。このニュースが新聞紙面を賑わしたが、学力の低下が、学校・子どもたちの問題としてでなく、沖縄の社会全体の課題として共有されているだろうか。

 学びは、社会参画をとおして自己実現を図るために必要な力を獲得する営みであると同時に、地域社会の構成者を育成することである。つまり子ども一人ひとりの学びの保障は、沖縄県を持続可能な社会として構築していくための必須条件なのである。

 沖縄の子どもたちの学びの獲得を困難にしている要因は何か。全国学力・学習状況調査では、保護者の経済状況と子どもの学力の相関関係が指摘されている。また福岡県人権同和教育研究協議会が福岡県内の4つ小学校を調査研究校として、10年間にわたって行った調査研究の報告書「40人学級における学力保障にかかわる少人数学習の研究」の中では、地域コミュニティーの弱体化や親・大人たちの貧困など問題が、重層的かつ複合的に子どもの学びや育ちに影響を及ぼしていることを明らかにした。同時に、家庭的に厳しい状況にあっても確かな学力を獲得していった子どもたちがおり、その背景には親を支える地域のコミュニティーや行政、ボランティア等の支援機関のかかわり、学校教職員の丁寧な取り組みが存在したと報告している。

 沖縄県でも子育てや教育、親支援に取り組み、実績をあげている事例がある。糸満市のNPO法人「いっぽの会」など、地域と連携してひとり親世帯の母親の就労支援や子育て支援に粘り強く取り組んでいる例、また「地域若者サポートセンターなは」のように、県立高校の校舎内にスペースを設け、高校生の居場所づくりと不登校の課題に協働して取り組んでいる実践などである。

 これらの事例は、子どもの学びや暮らしの困窮に遭遇した時、私たちが取り組むべきことは子どもの学びや家族の暮らしに関わる人たちが顔と顔の見える関係=ネットワークを構築し、チームとして課題に向かうことであることを示している。

 九州・沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会実行委員会では、2012年と2013年に「公益信託宇流麻福祉基金」と「おきぎんふるさと振興基金」の助成を受け、子育て支援の社会資源をまとめた「おきなわ子ども支援ガイドブック」を作成した。

 その取り組みを発展させるために、下記のとおり今年12月7日(土曜日)に沖縄大学で第7回の学習会を開催する。子育て支援や親支援を行う参加者が日頃の事例や取り組みの実践や課題を共有する場とし、新たなネットワークの広がりの場、課題解決の糸口の見つかる場としたい。


日時:平成25年12月7日(土)9:30受付、10:00~16:30

場所:沖縄大学3号館101教室

参加費:1000円

内容:

1 基調提案

2 模擬ケース会議及び交流