2012年3月31日土曜日

高等学校における特別支援教室=リソースルームの設置

平成24年度からの県立学校編成整備計画に盛り込まれた、北谷高校に発達障害等に起因する不登校の生徒の学び直しの学校「フューチャースクール」を設置するという構想は、設置する高校を中部地区のいずれかの学校とするという方向で修正され、収束に向かった感があります。

 新聞の報道でも、なぜ北谷高校なのか、なぜ一校に生徒を集めるのかなどといった関係者の疑問が取り上げられていました。すべての学校で発達障害による学習や生活上の困難を抱えている生徒の支援を行うという特別支援教育の理念からすれば、このフューチャースクール構想は、その流れに逆行するかのような印象を与えると同時に、特別支援学校を彷彿とさせるものがあります。

しかし
 県も何らかのアクションを起こさなければならない状況があるからこそ、「フューチャースクール」構想を打ち出さざるを得なかったのであり、発達障害等に起因する不登校等の状態にある生徒の支援は、まったなしの状態であることに変わりはありません。また、今後、設置校に指定された学校が、すんなり設置を受け入れるという保障もありません。高校における発達障害のある生徒への特別支援教育については、関係機関や医療に携わる人たちも巻き込んで議論をしていかなければならない課題です。

さて
 小中学校においては、発達障害等の児童生徒に対し、必要に応じて特別支援学級担当が学級担任と連携し、協力して支援を行っている例があります。
それに対し、高校では、あくまで学級担任や教科担任、あるいは、これに教育相談担当やスクールカウンセラーを含めた協力体制のもと限られた人たちのマンパワーで支援を行っているのが現状です。

 特別支援学級を高等学校に設置することは、法令上は不可能ではありません。しかし、私の知る限りでは国内で高校に特別支援学級を設置している例はありません。しかし高校に特別支援学級を設置するのは困難でも、特別支援教育を担う人を増やす方法は考えられないでしょうか。

 近年、身体障害のある生徒が入学した高校に対し、県は非常勤職員の加配を行って、その支援の充実に努めています。このような特別な配慮を必要とする生徒の支援を行うために高校に手厚い人的配置を進める上でのヒントとしてかつて「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」が提起した「特別支援教室」をもとに考えてみたいとおもいます。

 「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」が平成15年3月にとりまとめた「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(以下、「協力者会議最終報告」という。)では、小中学校における特別支援教育の体制の充実を図るために、現在の特殊学級のあり方を見直し、特別支援教室の設置について提言をしています。

 「特別支援教室」のイメージについて最終報告では、以下のように述べられています。
「・・・LD・ADHD・高機能自閉症等を含め、障害のある児童生徒が、原則として通常の学級に在籍し、教員の適切な配慮、ティーム・ティーチング、個別指導や学習内容の習熟に応じた指導などの工夫により通常の学級において教育を受けつつ、必要な時間に特別の指導を受ける教室として、例えば以下のような形態が想定される。・・・」

 特別支援学級が、児童生徒がそこに籍をおく「学級」であるのに対し、特別支援教室は、通常の学級に籍をおく児童生徒が、必要に応じて学ぶ場と時間を提供する「教室」であるという点で違いがあります。

 報告書では、大まかに3つの形態を想定しています。
①ほとんどの時間を特別支援教室で特別の指導を受ける形態。
比較的多くの時間を通常の学級で指導を受けつつ、障害の状態に応じ、相当程度の時間を特別支援教室で特別の指導を受ける形態。
一部の時間のみ特別支援教室で特別の指導を受ける形態。

 最終報告はあくまで、小中学校を想定したものでした。またその設置も結果として見送られ、実現することはありませんでした。しかし、その理念は、大きな可能性を秘めていると思います。

 特別支援教室は、障害のある生徒を少人数で指導をすることによって、生徒の学習を支援する場所という機能を持たせます。また学級担任と協調して、不登校から退学への坂道を転げ落ちていく生徒にとってのセーフティーネットとしての機能も果たすことができるでしょう。

 少子化による定員の減少で空いた教室を用い、複数の専任の教室担当を置き、教科指導の時間は当面、非常勤教諭の配置または、一部の進学塾が行っているビデオを視聴しながら学習するシステムを導入した授業形態などによって、個々の生徒の学習の進度に合わせた対応を行う、などが考えられるでしょう。

 また、「特別支援教室」という名称は用いず「リソースルーム」などの名称で、発達障害に限らず学習が遅れがちな生徒の学びの場として、すべての生徒を対象とした「部屋」を前提として位置付けることで、生徒が利用しやすい雰囲気にすることも必要でしょう。
こういった「部屋」と「教師」を、学校に配置することによって、高等学校における特別支援教育の充実にいたる道が開けていくのではないでしょうか。

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